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先般、私が以前所属しておりました自動車会社の設計開発センター(厚木にあります)を訪れました。 ここは、新車開発の一大拠点ということもあり、通常は、中に入ることがすこぶる難しい場所ですが、今回は、久しぶりに従業員やその家族そして地域住民を対象としたイベントが開催されました。 この催し、以前は毎年のように行なわれていましたが、いろいろな事情からしばらくは開催されず、今年は4年ぶりの開催ということです。 イベントの内容は @クルマづくりの営みを紹介する「クルマづくりツアー」 AGT-Rといった最近の代表車両による展示やパレード B販売会社や関係会社からの展示物の紹介や販売 C従業員などによるフリーマーケットや模擬店 などを含む多彩なものでした。 その中にあって、私としては、デザインセンターの見学ツアーが今回の催しの中で最も楽しみでした。 現職当時、先行スケッチやらクレイモデルを見学する為、何百回となく訪れたことのあるモデルルームやデザインスタジオのそこかしこに、当時の懐かしい雰囲気が思い出されました。 当時の私は、新しい車を世の中に送り出す全体の商品開発プロセスの中で、どちらかと言いますと、初期段階となりますが、商品企画を主な業務としておりました。 先行スケッチの中に企画の思いが反映されたものがあるか否か、そして、クレイモデルが企画の狙いに合致したものかどうかを確認する為に、デザインセンターに何度も足を運びました。 新車開発はいくつかのプロセスを踏まえますが、全体プロセスの中で、「商品企画」や「デザイン」に引き続いて、重要な役割を果たすのは「設計」です。 クルマの開発ににとどまらず、設計の果たす役割につきまして、少しお話したいと思います。 私がお会いする中小企業の経営者の中で、新しい商品づくりに熱意を燃やす方々は大勢おられますが、意外に「設計」の重要性を認識しておられる方は多くありません。 具体的な「モノ」をつくるところまでは、かなり熱心に取り組まれ、「モノ」が1品できた段階で「モノづくりが終了した」と合点されてしまうのでしょうか、それ以降のプロセスについては、いまひとつ力が入らないようです。 世の中の多くの方々に自社商品を買っていただくためには、量をつくらなければいけません。 そして、その多くの量の品物は、均質な精度と品質を保持することが求められます。 「設計」はこうした要件を満たす為には欠かせないプロセスです。 もう少し、面白く言いますと、「設計」こそ「無から有を生ずる」魔法の働きといえます。 私が以前従事していました「商品企画」は、簡単に表現しますと「商品のコンセプト」であり「計画ごと」でもあり、そこには「実体」があるわけではありません。 この段階では「無」の状態です。 これを「有」、すなわち形あるものにする働きが「設計」ということになります。 少し、話を進めます。 設計といいますと、昔は「設計図」を書くこと、今ではCAD上に、何らかの表現をすることが想定されますが、実はその前に行なう、大切なことがあります。 それは、設計要件をきちんとまとめることです。 これ無くして、具体的な設計作業に入ることはできません。 設計要件といいますと、難しそうに聞こえますが、例えば「バケツをつくる」とした場合の設計要件を事例として申し上げます。 「バケツづくり」の設計要件に関する検討アイテムついて、簡単にポイントを示しますと、次の通りとなります。 @コンセプト:一般家庭で使うものか、ブティックなどでの飾り用のものか、酪農などに使うものか Aデザイン:実質的な機能本位重視か、装飾的な要素を織り込んだものか、また、どのような形状そして色調にするか B基本諸元:縦、横、高さなどの寸法をどうするか、重量は如何ほどか、そして素材は何を用いるか C目標品質:通常の使い方で、何年持てばよいか、何kgの水まで耐用できるか、高熱や寒冷に対する耐性はどこまでか、寸法精度はどの程度とするか D目標原価:製造原価はいくらとするか、その場合の想定販売価格は如何ほどか E生産数量:毎月何個生産するのか、いつまで生産し、トータル何個生産するのか といったことを、バケツの設計に取り掛かる前に、関係する部署と話し合いし、決めなければいけません。 設計要件のまとめは、商品化プロセスの中でも、非常に大切なところです。 そして、設計に取りかかり、設計の次の工程では、設計に基づく「試作」がはじまり、「試作」をベースに「実験」という流れになり、バケツ作りに関する商品開発のPDCAプロセスが進行して行きます。 ここで私が申し上げたい点は、まず、ものづくりを志向する中小企業経営者の方々には、是非、設計機能の重要性を認識していただきたいということです。 くどいようですが、設計が存在して、初めて、多くの方々に提供できる商品が実現・提供できるということです。 そして、設計に携わっている方々につきましては、「設計集団こそ会社の中における最強のクリエイティブ集団」であるとの自負と誇りを持っていただきたいと思います。 設計の働きこそ、明日の会社の活力を保証するパワーとなります。 私も、将来はエンジニアになりたいと夢見たことがありました。 しかしながら、物理が全く駄目で理系を断念しました。 でも、私がエンジニアになっていたら、どんなクルマができていたでしょうね。 |
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